DTMをする際の一番メインになるソフトのことをDAWといいます。
この記事では以下の3点について詳しく説明していきます。
- DAWとは何か?
- DAWの選び方
- 各DAWの紹介
DAWとは?
「Digital Audio Workstation」の略で、要するに「超便利な音楽制作ソフト」と思ってもらえば間違いありません。
バンドサウンドも、テクノポップも、ジャズも、ヒップホップも、現代の音楽はまず確実にDAWを使って作られています。
DAWの大きな利点は主に以下の4つです。
- 録音と打ち込みの両方に対応
- いくらでも編集可能
- パソコン1台で完結
- 「プラグイン」で拡張可能
録音と打ち込みの両方に対応
DAWは、いわゆる「録音=レコーディング」もできますし、「打ち込み」をすることもできます。
ギターやドラム、ボーカルなどを全て生録音すれば、DAWが登場する以前と同じような音楽製作もできます。
逆に、ドラムやシンセサイザーの打ち込みを全てDAW上で行うことで、これまでに無かった音楽も生まれています。
とにかく「何でもできる」ということがDAWの強みの1つです。
本格的に録音する場合は、オーディオインターフェイスと呼ばれる機械を接続する必要があります。詳しくは以下の記事で紹介しています。
いくらでも編集可能
文章を書く際、紙よりもパソコンの方が便利なはずです。
いくらでも切り貼りできますし、やり直しも自由です。
テープレコーダーよりもDAWの方が便利な理由も、まさにこれと同じです。
テープレコーダーの場合、テープ自体のコストが高いのに加えて、編集作業も非常に面倒でした。
DAWではテンポの変更もボタン1つで可能ですし、面倒なテープの管理などもありません。
パソコン1台で完結
「レコーダー」はあくまでも「録音機器」でしかないため、楽器やエフェクターなどは1つ1つ購入するしかありません。値段も高いし、設置スペースやケーブルで結線するための知識も必要です。
それに対し、DAWは究極的には「パソコン1台で完結」してしまいます。
もともとはガチガチにスタジオを構築していた中田ヤスタカも、最近はこんなシンプルな機材で作曲をしています。
https://www.instagram.com/p/BsKOEtdBCew/
プラグインで拡張可能
DAWには最初からいろんなエフェクトやシンセサイザーが搭載されていますが、後からプラグインを追加することで機能を拡張することができます。
例えば、「ドラム音源はDAW付属しているけど、もっとリアルな音が欲しい!」と思ったら、BFD3などのプラグインを購入することで、よりグレードの高い音源を手に入れることができます。
そのため、「良い音を出す」という意味では、どのDAWを使ってもあまり変わらないとも言えます。
DAWの選び方
DAWの便利さはわかっていただけたでしょうか?
ここからは、「DAWを選ぶ際の基準」をお伝えしようと思います。
編集画面の使いやすさ・かっこよさ
正直いうと、最近のDAWはどれを選んでも「なんでもできる」ので、「このDAWじゃないとダメ!」というのが少ないです。
「必須機能」はどのDAWも持っているので、製品ごとの差は「付加価値」「差別化」程度といっても間違いじゃないと思います。
となれば、「なんとなく使いやすい」とか「画面がかっこいい」というのも十分な選択理由になります。
機能は少ないけど、画面がわかりやすいから使いこなせるDAW
この2つなら、後者の方がその人に合ったDAWだと思います。
ジャンル
「基本はどのDAWも一緒」と書きましたが、もちろんある程度の差異はあります。
「自分の作りたいジャンルに合ったDAWを選ぶ」という方法もオススメです。
DAWによって「打ち込みに強い」とか「レコーディングに強い」といった特性があります。
そのDAWのユーザー層も得意ジャンルに偏っているはずなので、作曲の際に情報を得やすいという利点もあります。
ただ「ジャンル」といっても、「ロック向け」と「ファンク向け」のような細かい違いがあるわけではありません。
ザックリと「クラブ系」と「クラブ系以外」という分け方が適切かなと思います。
「クラブ系」とは、テクノ・ハウス・エレクトロニカ・EDMなどを指すと思ってください。
中田ヤスタカは完璧にクラブサウンドですが、あまりクラブ系のイメージのないCubaseを使っていたりします。
付属プラグイン
すでに説明したとおり、DAWは「プラグイン」という形でいろんな機能を追加することができます。
あとから買い足すことできますが、最初からたくさんのプラグインが付属していたら嬉しいですよね。
DAWによって、付属プラグインの質・量は違います。あまり買い足したくない人は、付属プラグインが豊富なDAWを選ぶのもいいと思います。
もちろん、最近はフリーのプラグインもかなり充実しているので、無料で機能を拡張することもできます。筆者の選ぶ「使える」フリープラグイン記事でもたくさん紹介しています。
Cakewalk by Bandlab
値段 | 無料 |
クラブ系に特化 | NO |
プラグインの充実度 | ★★☆ |
「元有料」のフリーDAW
完全初心者だったら、とりあえずこのCakewalkというソフトをダウンロードしてみればいいと思います。
Cakewalkはもともと5万円程度で販売されていたDAWですが、開発元の経営難から1度は開発が停止していました。
しかし別の会社に権利が譲渡され、なぜか現在はフリーソフトとして配布されています。
「元有料」だけあって、この記事で紹介している他のソフトとも見劣りしない機能を持っています。
とりあえずCakewalkを使ってみて、気に入れば使い続ければいいし、微妙なら別ソフトの購入を検討すればいいです。
付属プラグインは貧弱
有料時代はいろいろなプラグインが付属していましたが、無料になってからはさすがに減ってしまいました。
とはいえ、とりあえず試してみる分には十分な機能があります。
Cakewalkを基本にプラグインを追加していくか、別のDAWを買うかは好みしだいですね。
最近は優秀なフリープラグインが多いので、いろいろ試してみるのもいいと思います。おすすめのプラグインは以下の記事で紹介しています。
Windows専用
例のごとく、Macには対応していません(2019年3月現在)。
(有料版の頃からWindows専用だったので、Macにありがちな「フリーソフトが少ない問題」とはちょっと違いますが・・・。)
Macを使っている人は、まずGarageBandを使ってみましょう。その雰囲気が気に入ればLogic Pro(後で紹介します)を買うのがいいでしょう。
Cubase by Steinberg
値段 | 高 |
クラブ系に特化 | NO |
プラグインの充実度 | ★★★ |
DTMソフト(DAW)シェア日本一
日本でDAWといったら、まずはCubaseが最初に頭に浮かんできますね。
DTMブログでおなじみの藤本健さんの調査では、Cubaseがシェア1位を獲得しています。
ユーザーの多さはネット上での情報の多さに直結し、初心者にとっては心強い味方になります。
マニュアルをじっくり読まなくても、とりあえずググっておけば同じ問題にぶち当たった人が解決策を教えてくれます。
「普通」なDAW
「横スクロール」な画面配置は、音楽を制作する上では直感的でわかりやすいです。
後でも触れるAbleton LiveやFL Studioなどはちょっと独特な操作性なんですが、Cubaseはそういった違和感はないはずです。
CubaseとLogicは、スタンダードなDAWとして第一候補になるでしょう。
しかし、LogicはMac専用ですので、Windows使いの人はCubaseを選ぶしかありません。
仮に他の変わったソフトを試してみたくなったとしても、メインのDAWとして使い続けることができる安心感があります。
作曲支援機能が豊富
Cubaseに特徴的な機能として、コードトラックという機能があります。
これは、コード進行を選択するだけでCubaseが自動で音を鳴らしてくれるという機能です。
さらに、曲作りに詰まったときなどのために、次のコードをCubaseが提案してくれる機能もあります。
値段が高い
最上位版は約6万円です。
これを高いと感じるかは人それぞれでしょうが、
FL Studio: 約27,000円
と比べると差が際立つと思います。
プラグイン紹介
ボーカルのピッチ修正が可能な「VariAudio」や、総合マルチ音源である「Halion Sonic SE」などが付属しています。
Halion Sonic SEは機能制限版であり音色数は少ないものの、音質は非常に優れています。
Studio One(後述)も総合音源が付属していますが、音質は微妙です。
Logic Pro by Apple
値段 | 安 |
クラブ系に特化 | NO |
プラグインの充実度 | ★★★ |
Apple謹製のDAW
LogicはMac専用で、Windowsでは動きません。
Mac vs. Windowsについてはこの記事で詳しく書きました。
Cubaseと比較されることも多く、スタンダードなDAWとして世界中で使用されています。
全体的にCubaseよりもすっきりとしていて、クールな画面が特徴です。
「本当はLogicがいいけど、マシンがWindowsだからCubaseにした・・・」という声もちらほら聞くことがあります。
Apple製なので、macOSのアップデートにはちゃんと対応してくれるという安心感があります。
しかし残念ながら、Mac専用だからといって安定性が高いとは全く感じません。
むしろ一曲作る間に何度も落ちました・・・。
値段が安い
Logicは異常に安いです。
2019/2月現在、23,800円で買うことができます。
プロが普通に使っているソフトがこの値段というのはホントに破格です。
ちなみに学生なら、動画編集ソフトのFinal Cut Proなんかが同梱されている「教育機関向けPro Appバンドル」もほぼ同じ値段で買えます。
Garage Bandに似てる
最近のiPhoneにはGarage Bandが最初から入っているので、DTMに疎いバンドマンでも使ったことがある人が多いんじゃないでしょうか。
Garage BandはLogicの機能制限版という扱いで、いわば親子みたいな感じです。
Cubaseなんかを買うと「また1から覚え直す」ことになりますが、Logicならガレバンでの経験をそのまま活かすことができます。
Logic Remote
Logic Remoteは無料で使用することのできるiOSアプリです。
Logicの再生/停止やフェーダーの操作などを、iOSデバイス上で遠隔で操作することができます。
Logicを起動していればwifi経由で勝手につながってくれるので、面倒なセットアップは必要ありません。
iPhoneの小さい画面でできることはちょっと少ないんですが、iPadがあればかなり便利だと思います。
他のリモート操作系のアプリと比べて接続がカンタンなのも特徴です。
プラグイン紹介
iOS版GarageBandでもおなじみの、視覚的・直感的に分かりやすい音源がたくさん付属しています。
他にもAlchemyという本格的なシンセサイザーも搭載されており、値段の安さに見合わない充実度です。
Studio One by Presonus
値段 | 中 |
クラブ系に特化 | NO |
プラグインの充実度 | ★★★ |
新進気鋭のブランド
Studio Oneはバージョンがまだ4という新しいDAW(Cubaseは9.5)ですが、発表されてからは物凄い勢いでシェアを拡大してきました。
Cubase, Logicと同じような「横スクロール」型のDAWで、パっと見は派手な特徴はありません。
しかし、近年になって「ゼロから」開発されたソフトなので、古い機能などが足手まといにならず、軽快に作業ができることがウリになっています。
特に強い「ブランド」も持たずにこれほどの地位をあっという間に確率したのは、その実力が一般のユーザーに広く認められたからに他なりません。
私の周りでも、新しくDAWを購入する人は大体CubaseかStudio Oneです。
シンプルな操作が可能
Cubaseと比べるとシンプルな操作が可能とよくいわれます。
こういったことは割と他のユーザーからも聞かれますし、公式サイトにもそれを目指したということは書いてあるのですが、個人的にはそこまでかな? という印象です。
画面が見やすいというのもよく聞きますが、これも私にはあまり実感できませんでした・・・。
マスタリングに強い
Studio Oneは基本的に作曲ソフトですが、マスタリング機能にも力を入れています。
マスタリング画面からミックス画面に移動することができ、ミックスを変更すれば書き出すことなくマスタリング画面に適用される、というシームレスな作業を実現しています。
また、CDのプレス業者に入稿するための「DDPファイル」のインポート・エクスポートに対応しているため、Studio Oneだけで作曲から入稿データ作成までこなすことができます。
プラグイン紹介
あまりパッとした音源は搭載されていませんが、エフェクト類は十分高品質です。
付属品として一番の目玉はMelodyne Essentialです。
CubaseのVariAudioも似たようなピッチ補正プラグインですが、Melodyneは業界標準の高精度を誇ります。
機能制限版とはいっても基本的なことはできるので、かなり重宝するはずです。
Ableton Live
値段 | 高 |
クラブ系に特化 | YES |
プラグインの充実度 | ★★☆ |
独自のセッションビュー
Ableton Liveに特徴的な機能は、下の画面のような「セッションビュー」です。
一般的なDAWの「横に流れる」画面と異なり、それぞれのトラックが「縦」になっています。
長方形の「クリップ」を選択すると、その中のmidi/オーディオが再生されます。
最近はiOSアプリでも似たような機能を持ったものが多いですね。
外付けのハードウェアのコントローラーなどと連携することで、DAWというよりも楽器のように「演奏」することもできます。
シンプルなデザイン
abletonはトラックの複雑なルーティングができなかったり、「横スクロール画面」でミキサーを表示できなかったり、しばしば機能が限定されている面があります。
表示する情報量をあえて減らすことで、威圧感の少ない画面を実現しているとも言えます。
とはいえ、もしかしたらCubaseなどから移ってくると、「なんでこんなこともできないんだ!」と思うこともあるかもしれません。
そういう場合はabletonを「楽器の1つ」として、他のDAWでのワークフローに組み込むのがいいかもしれません。
直感的な操作?
「abletonは直感的な操作が可能で、はじめて触る人でもわかりやすい!」
みたいなことを言う人もいますが、私はこれには同意できません。
なんだかんだで独特な操作も多いですし、抽象的なアイコンが多くてハッキリ言ってひと目にはわかりにくいです。
むしろ「はじめはわかりにくいが、慣れると使いやすい」という感じです。
プラグイン紹介
バージョン9までは正直いってかなり微妙で、どれもそこまで品質がよくなかったです。
しかし10になって追加されたプラグインはどれもいい感じです。
Wavetableは流行りのウェーブテーブルシンセサイザーで、かなり複雑な音作りが可能です。
Drum Busはドラム向けのエフェクトプラグインで、いい感じの「旨味」を出してくれます。
FL Studio by Image Line
値段 | 安 |
クラブ系に特化 | YES |
プラグインの充実度 | ★★★ |
レスポンシブな動作
割と主観的なことから書いてしまいますが、FLを使ってまず最初に感じるのは、「動作が気持ちいい」ということです。
例えばファイルブラウザをスクロールしてサンプルをドラッグするだけでも、ストレスなくというより「気分良く」操作できます。
例えるなら、はじめてiPhoneを触ったときって「ぬるっと」感が気持ちよくなかったですか?
これはソフトのロード時間中も画面を動かし続けることで、「固まってる感」をユーザーに感じさせないという配慮だと思うんですが、FL Studioもそういうユーザビリティがすごく高いです。
優秀なピアノロールとステップシーケンサー
これは上の話の続きみたいなものですが、ピアノロールを使っているときのストレスがかなり少ないです。
DAWの操作の中で一番細かくてめんどくさいのはmidiの編集だと思うので、これだけでもかなりFLを使う理由になると感じます。(実際にそう言ってる人もよく見ます)
FLのパっと見の一番の特徴であるステップシーケンサーも、やっぱり「気持ちよく」ドラムを打ち込むことができます。
オーディオの扱いはやはりクセがある
私が少し触ってみた感じでは、そこまでオーディオ録音に「壁」があるようには感じられませんでした。
ただ、ableton以上に「シーケンサー」としての性格が強かったせいか、他のDAWと同じようにオーディオを録音していくというわけにはいかないようです。
オーディオ録音をメイン作業と考えている人がFLを選ぶ理由はないでしょう。
プラグイン紹介
とにかく大量のシンセサイザーが同梱されていますし、どれも多彩なキャラクターを持っています。
ここでは紹介しきれないので、ぜひ公式サイトで確認してみてください。
ただ生楽器系の音色はほぼありません。やっぱりクラブ系主体の人にオススメです。
Reaper by Cockos
値段 | 激安 |
クラブ系に特化 | NO |
プラグインの充実度 | ★☆☆ |
激安多機能DAW
$60の激安DAWです。
機能的に上記のDAWたちに負けているということはありません。
当然VSTに対応していますし、細かいルーティングも可能です。
しかし唯一の欠点として、UIがダサいです
私もabletonを買うまでは何年もReaperを使っていましたが、デザインや所有欲というものは結構モチベーションに関わるんだなと実感しました・・・。
とはいえ、GarageBandなどとは違って、あくまでもフル機能を持った立派なDAWです。
他のDAWのように、ことあるごとに「お布施」を払うよりも、その分をプラグインに充てたいという方にもおすすめです。
プラグイン紹介
イコライザーやコンプレッサーなどの基本エフェクト以外は無いものと思った方がいいです。
(特に音源・シンセサイザーはあまり実用的ではないです)
まとめ
「そもそもDAWとは?」というところから、各DAWの特徴まで紹介しました。
もちろんDAW選びは大事なんですが、DTMには他にも考えること・必要なものが結構たくさんあります。
例えば、いざ曲を作ろうとしても「DAWが重すぎる・・・」とか「録音ってどうすればいいの?」といった悩みに直面すると思います。
機材に関しては以下の記事にまとめたのでぜひ参考にしてみてください。