中学生時代から10年以上貧乏DTMerを続けてきた筆者が、なんとか金を使わずに良い音を出そうと試行錯誤してきた経験から、「これは使える!」と感じたフリーのプラグインを紹介していきます。
コンプレッサー
Rough Rider 2 – Audio Damage
かなり有名なフリープラグインで、やっぱりそれだけ「使える」ということです。
個人的に「使える」プラグインには2種類あると思っています。
- 単純に質が良い
- 粗いけど効きが良い or キャラクターが明確
Rough Riderは後者です。「アナログ特有の温かさが・・・」とか「正確な音作りが・・・」とかは置いておいて、とにかくコンプの楽しさみたいなものを思い出させてくれます。
どういうことかといえば、とにかく派手にかかります。Rough Riderは「スネアがバカになるコンプ」という別名があるんですが、使ってみるとよく理解できます。「スコーーーーン!!!」「パコーーーーン!!!!!」というスネアが簡単に作れます。
コンプレッションが派手なだけでなく、アタック・リリースツマミも極端なくらいに効きます。つまりセッティング次第でかなり変な音になります。しかし、逆にいえば大工事も可能ということです。
「コンプは大事らしいけど、いまいちどういう効果なのか分からない」という初心者の人も、Rough Riderを使えば理解しやすいんじゃないでしょうか。
Supercharger – Native Instruments
「Komplete Start」というフリープラグインバンドルに入っているコンプです。
(Komplete Startにはその他いろいろなエフェクト・音源が入っているので是非チェックしましょう)
DTM界隈最強レベルの知名度を持つNative Instrumentsが作っているだけあって、「使える」音のコンプです。アタックやリリース、レシオなどを細かく調整することができないので、トラックの味付け用途がメインになります。
個人的によく使うのは、クリーンのエレキギターのカッティングやアルペジオを潰すときです。パラメーターが少ないぶん、ペダル型エフェクターのような感覚で挿せます。
Compressを上げると単純に潰れていくので、アタックが消えてサスティンが伸びます。輪郭が欲しいときはPunchスイッチを入れるとアタックが復活します。とはいえ、僕は後段にデジタル系のコンプを入れて調整することが多いです。
リミッター
Limiter No. 6 – Vladislav Goncharov
マスタリング用のリミッターです。
評判の良いフリーのリミッターは全て試しましたが、その中では群を抜いてよかったのがコレです。
音圧の上げ幅、トランジェントやミックスバランスの破綻の無さは優秀です。パラメータも多いので細かく質感を調整していくことも可能です。
ただ、ノブが多すぎて持て余しがちなのは事実ですし、なにより有料プラグインには敵いません。音圧を最近の市販音源レベルまで上げるのは厳しいと思います。
コンプや空間系なんかは「キャラクター重視」もありですが、マスタリングプラグインに関しては有料のものを買うのが近道だと思います。
僕が実際に使っているT-Racks Oneは、「いままでの苦労はなんだったんだ・・・」というくらいラクに音圧を上げてくれます。
下の記事で紹介しています。
TLs Pocket Limiter – TbT
こちらはシンプルなリミッターです。
マスターではなくトラックに挿すのがメインになると思います。
フリーのシンプルなリミッターとしての完成度でいえば最高じゃないでしょうか。ゲインを上げるにつれてペラペラになるプラグインが多い中で、これはしっかりとした存在感を保ち続けてくれます。
ただ、いかんせん古いこともあってWindows 32bit限定です。
コーラス
TAL Chorus LX – TAL Software
Roland Juno-60というシンセサイザーについていたコーラスをクローンしたプラグインです。
音質はアナログっぽい太さが特徴的。Chorusボタンには「I」と「II」があり、両方またはそれぞれを選べます。「I」だけだとちょっと薄味ですが、「II」を併用することでコッテリしたコーラスになります。
薄めにかけるのも可能とはいえ、やっぱり強みは「温かくてエグみさえあるアナログコーラス」の音です。「すこし音像を広げたいだけ」「定位を不明確にしたいだけ」という用途には向いていません。
Multiply Chorus – Acon Digital
上記のTAL-Chorusと比べると幅広い音作りが可能です。
中でも1番得意なのは「爽やかで現代的なコーラスサウンド」です。
TAL-Chorusのようなエグみやクセはなく、デジタル的に音をダブリングしてくれます。Depth, RateやVoice Countを上げることで音の揺れは強調できますが、限りなく透明に近いコーラスも可能です。
上にも書いたような、「すこし音像を広げたいだけ」「定位を不明確にしたいだけ」という用途にはまさに最適です。イコライザーを使えば、エフェクトを強調したい帯域だけ持ち上げることも可能です。
「コーラス」という枠組みにとらわれず、汎用的な「定位コントローラー」として活躍できるプラグインです。
Azurite – Distorque
どちらかというとMultiplyに近い「爽やか系」コーラスです。
ColourノブをAnalog側に回すことでアナログ系に寄せることも可能ですが、個人的にはデジタルサウンドの方が使いやすいなという印象です。
Multiplyには無いパラメーターもあるので、好みによって使い分けるのがいいと思います。
リバーブ
TAL-Reverb-4 – TAL Software
シンプルなプレートリバーブです。
これといって特徴のある音ではありませんが、必要なパラメータがまとまっていて使いやすいです。各ツマミの効きも良い感じです。
Space Knob – Abletunes
こちらはルーム・ホール系です。
見てのとおりノブが1つで、右に回すほどリバーブが強くなります。
音質はそれなりにリアルかつ使いやすいです。ただ、当然ながら細かい調整は不可なので、挿せるトラックは限られてしまうかもしれません。
OldSkoolVerb – Voxengo
「音をなじませるためのリバーブ」というより、「エフェクトとしてのリバーブ」といったキャラクターです。
まったくもって「上質なリバーブ」ではありません。半分ディレイのような、カラオケエコーのような、チープなサウンドです。しかし、だからこそ面白いエフェクトとして使えます。
(例えばPre-delayを下げていくとビヨンビヨンしたサウンドになって面白いです。)
逆に、ふつうのリバーブとして汎用的に使うのは難しいです。
ディレイ
TAL-Dub – TAL Software
またしてもTALです。この人(会社?)のプラグイン作りのセンスはほんとにすごいです。しかも、それを無料で公開してくれてるのはありがたすぎますね。
ダブに使われるようなテープディレイをシミュレートしたプラグインです。
ふつうのデジタルディレイと比べると、エフェクト音の劣化(こもり・ひずみ)が特徴的です。1回目からすでにモコモコで、繰り返すたびに劣化が増していきます。
強烈なキャラクターを持っているので、汎用ではなく「ここぞ」のタイミングで使うプラグインです。
トランジェントシェイパー
Attack Knob – Abletunes
見てのとおり、Space Knobと同じシリーズです。
簡単にアタックを強調してくれるプラグインです。アタックを消す方向には調整できません。
トランジェント調整プラグインは他にもありますが、機能的にはコレだけで十分じゃないかと感じます。(複雑に調整したいならコンプを使うし・・・)
サチュレーター
Drive Knob – Abletunes
同じくKnobシリーズです。
有名なSoftube Saturation Knobも含め、フリーのサチュレーションプラグインは結構たくさんあります。
でも個人的に1番「使える」と感じたのはコレでした。
サチュレーターって、プラグインによっては中域に寄り過ぎだったりします。そういうのは音が甘くなりすぎるのでイマイチ使い所が難しいんですよね。
このDrive Knobのいいところは、レンジ感を失わずに歪ませられる点です。帯域は偏らないですし、トランジェントを変にいじることもありません。
Drive Knobと同じようなプラグインとして、WavesのOne Knob Driverがあります。見た目はそっくりですが、One Knob Driverはかなり甘いサウンドです。(例えるなら、ギター向けのオーバードライブペダルのような感じです。)
エキサイター
La Petite Excite – Fine Cut Bodies
フリーのエキサイターは少ないので貴重です。
ステレオイメージャー
Wider – Infected Mushroom
「もともとステレオの音源の広がりを調整する」というプラグインもありますが、Widerは「モノラルの音源を左右に広げる」という効果があります。
フリーだと同じような機能のものは少ないはずなので、とりあえず落としておくと便利です。
アナログモデリングシンセ
Tyrelln6 – u-he
ベーシックな機能を持った、使いやすいアナログシンセです。
といっても、いくつかのモジュレーションも備えているので、音作りの幅は結構あります。アナログながらもメタリックなサウンドも出ます。
個人的にSynth1の音に魅力を感じないので、シンプルなアナログシンセが欲しい時はこれを使っています。
TAL U No 62 – TAL-togu Audio Line
Roland Juno 60のクローンです。
TAL-Chorusはもともとこのプラグインのエフェクト部分を取り出したものです。
独特な浮遊感のあるコードサウンドが出せます。
TAL BassLine – TAL-togu Audio Line
Roland SH-101のクローンです。
プラグインとは思えないくらい、生々しくて太いサウンドが特徴です。
モノフォニックということもあり使用用途は限定されますが、とにかく独自の魅力のあるシンセです。
FMシンセ
Dexed – Digital Suburban
YAMAHA DX-7のクローンです。
ツマミが多すぎるので音作りするのはツラいですが、公開されているプリセットを読み込めば簡単に多彩な音が出せます。(FMシンセはそもそもそういうもの)
挙動がたまにおかしく、音が鳴り止まなかったりすることがあるのが難点です。
エレクトリックピアノ(ローズ)
Sweetcase – NoiseAsh
フリーのエレピ(ローズ)だったらこれが最高です。
「チープな音が欲しい」という特殊な用途で無い限りはこれ1択です。他にありません。
なんなら市販の有料音源にも勝ってるんじゃないかと思うことすらあります。
ちゃんと立体感がありますし、ローズのキラキラした雰囲気が出てます。
まとめ
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