ギターのピックアップ交換に効果を期待しすぎてはいけない

ギタリスト
新しく買ったギター、なんか微妙・・・。
ピックアップを交換したら激変するかな?

あまり期待しないほうがいいでしょう。

筆者は一時期、狂ったようにギターのピックアップを交換しまくってたことがあります。

でも、「まるで別のギター!」というほどの効果を感じたことは一度もありません。

結論からいうと、「ピックアップを交換する価値がある」のはこんな時くらいです。

  • 今のギターにある程度満足している
  • 目指す音の方向性が明確

ピックアップ交換でどれくらい音が変わるのか?

前提:激変はしない

ギタリスト
安いギターなのに、ピックアップを換えたら音が激変した!
ギターの出音はピックアップがすべて!!

ネットを見ていると、こんなことを言っている人によく出くわしますが・・・ほんとに?

実際にそう感じている人がいることはもちろん否定できません。

でも、そうやって大げさなことを言う人に限って、1ヶ月や2ヶ月もするとまた別のピックアップに換えてたりするんですよね・・・。

ギターの出音はピックアップがすべて決める

こんな「ピックアップ原理主義」みたいな主張が、ネット上では強すぎる気がします。

筆者の想像ですが、「ピックアップ原理主義」の台頭は、楽器メーカーや小売店が「素材本来の鳴りを妨げない極薄塗装」とか「湖の底から引き揚げた木材」などの胡散臭い売り文句に対するカウンターではないでしょうか。

つまり、こういう構図です。

大手企業(メインカルチャー)の「ピュア主義」
vs.
ネット(サブカルチャー)の「合理主義」
ネット民
楽器屋の売り文句、なんか胡散臭い・・・。
ん? ピックアップがすべて?
・・・楽器屋より合理的だし信用できそう!

メーカーや楽器屋は妙な付加価値をムリヤリ作りだして、楽器の売上を伸ばそうとしている感があります。

顕著な例は、某大手楽器店のプライベートブランドですね。

(公式の紹介ページが消滅していたので、ブログ記事「凄いぞ!!タイムレス・ティンバー」から引用)

「五大湖の底に約70年~250以上眠り続けた大自然の銘木」

「水中のバクテリアが時間をかけて木材の不純物を食べ尽くしたことにより、その繊維が壊れずさらにレゾナンスが30%アップ」

・・・楽器作りに対する強い熱意を感じますね。

でも、いくら「良いギター」とはいえ、誰しもできるだけお金はかけたくないはず。

コスパ最優先で合理的なネット民にアピールするには、これくらいライトな売り文句のほうがウケます。

「いや、木の鳴りとかエレキには関係ないっしょ。結局ピックアップで全部決まるって」

「○○がすべて」「○○以外の要素は無視してOK」

こういうのは分かりやすいので信じたくなりますが、世の中そこまで単純ではないです。

エレキギターはいろんな要素が組み合わさった楽器であり、だからこそ難しく、楽しいんですよ。

ピックアップ以外の要素

ギターの種類

こう言ってしまうと元も子もないですが、今のギターが気に入っていないのなら、本体を買い換えるのが一番効果的です。

それも「レスポール → ストラト」のような、別のモデルに。

初心者は高いギターを買ってはいけない」という記事でも詳しく書いたんですが、筆者はもともと30万円くらいの高級レスポールを使っていました。

でも、音や弾き心地がどうしても気に入らなくて、Lindy Fralinのこれまた高級ピックアップに交換したり、とにかく試行錯誤を重ねました。

その結果どうなったかというと、「やっぱムリ」と思ってレスポールは売り払い、5万円くらいの中古の国産ストラトに落ち着きました。

値段やピックアップなんて関係なく、僕はそもそも「レスポール」というギターが好きじゃなかったわけです。

PU交換で「弾き心地」は変わらない

ピックアップを交換することで、手っ取り早く、ギターの出音をある程度変えられることは認めます。

でも、ギターの良し悪しって「音」だけですか?

仮にレスポールからストラトの音が出たとしても、僕はレスポールは弾きたくありません。

ボディが厚いせいか分かりませんが、レスポールはピッキングが吸収されるような鳴り方をするので、弾きにくいんですよね。

逆に、SGの反応はフェンダー系に近くて好きです。

生音教徒
ギターは「鳴り」がすべて!!
ニトロセルロースラッカーは木の呼吸を妨げない!!!
ビンテージ特有の枯れた「鳴り」が最高!!!!

これも「ピックアップ教」とはまた違う宗教です。

でも、やっぱり生音で弾いてて楽しいギターがその人に向いていると思います。

つまり、ピックアップの交換では対処できないわけです。

アンプ

「音」を変えたいんだったら、ピックアップよりアンプにこだわった方がいいと思います。

ピックアップのブランドの差
vs.
フェンダーとマーシャルの差

どう考えても後者の影響の方が大きいです。

「アンプもギターはもう十分こだわってる。次はピックアップだ!」

というなら、まあいいんじゃないでしょうか。

でも、いろんなことをすっ飛ばして「ピックアップを変えればどうにでもなる」というのはやっぱりおかしいです。

どういうときにPUを交換するべきか

  • 今のギターにある程度満足している
  • 目指す音の方向性が明確

冒頭にも書きましたが、こういう場合ならピックアップ交換を検討してもいいと思います。

今のギターにある程度満足している

何度も述べているように、ピックアップを交換しても「激変」はしません。

つまり、「あまり気に入ってないギター」を改造したところで、たぶん良い結果は出ないということです。

逆に、「それなりに満足だけど、あと一歩のギター」だったら、細かい調整で良くなる可能性はあります。

目指す音の方向性が明確

上の条件に加えて、「現状の音がどういう傾向で、それをどういう方向に音を変えたいのか」を把握している必要があります。

スマホを例に考えてみましょう。

仮に同じ値段なら「容量は多いほうが良い」というのは誰でも同じ。

→ でも、「ディスプレイは大きいほうが良い」かどうかは、人による。

ピックアップに話を戻します。

ピックアップには、「スマホの容量」のように、「〇〇なら〇〇なほど良い」というわかりやすい基準はない。

→ つまり、「自分の求めるディスプレイの大きさ」のように、「自分の求める音」を知っていなければ、ピックアップを選びようがない。

まさか、「ピックアップの出力は高ければ高いほど良い」なんてことはないですよね?

ギタリスト
いまのストラトは基本的には気に入ってる・・・。
でも、もともとビンテージ系のモデルだから、ちょっと音が繊細すぎるなあ。
もう少しモダンな音もほしいから、フロントだけLace Sensorに交換してみるか!

これくらい具体的なビジョンを持っているなら、交換の価値はあるでしょう。

逆に、「よくわからんけど、PU交換で『激変』するらしいし、サウンドハウスで評価が高いやつでも載せてみるか!」みたいなやり方では、おそらく満足な結果にはならないはずです。

まとめ

要は「ピックアップなんてそんな重要じゃない」ということです。

エフェクターみたいに取っ替え引っ替え使えるものじゃないし、音の比較もしにくいのでコスパも悪いと思います。

いまのギターが気に入ってないなら、思い切って買い替えた方が時間・お金の節約になるかも・・・。