IK MultimediaのMODO BASSで1曲作ったので、インプレッション+デモ+機能紹介をします。
この曲ではMODO BASSを使っています。
アンシミュは通さずにDIのみ、コンプとEQだけかけています。
ベースメインの短いデモ演奏です。
こっちはアンプサウンドも混ぜてます。
指弾き・スラップ(ジャズベ):
ピック弾き(プレベ):
この記事のコンテンツ:
- MODO BASSの良いところ・微妙なところ
- 細かい機能紹介
- 各機能を使ったデモ音源
MODO BASS–インプレッション
MODO BASSの印象は「やっぱりモデリング音源」という感じです。
つまり「音作りの幅は広いし、反応が良いから打ち込みやすい。でもちょっと生々しさ&迫力に欠ける」ということです。
「サンプリング音源とモデリング音源」について知らない方のために説明します。
仕組みとしてはこうです
- サンプリング音源:実際のドラムやベースの音を録音して、MIDIの打ち込みで再生する。
- モデリング音源: ドラムやベースの音をコンピュータ上でリアルタイムに合成する。
それぞれの長所・欠点はこんな感じ
- サンプリング音源:リアルで迫力のある音が出しやすい。でも音作りの幅は狭い&容量が大きい
- モデリング音源: 音色をガラッと変えられる&容量が小さい。生々しさと迫力に欠けがち
ドラム音源のBFD3や、ベース音源のTrilianなどは全てサンプリング音源と呼ばれます。
これらの音源はすごくリアルだし迫力もありますが、上記のような問題点もあるわけです。
長所
柔軟な音作りができる
詳しくは下の「機能紹介」の項で触れますが、MODO BASSは調整できるパラメータが異常に多いです。
- ピッキング位置
- ピッキング強さ
- オルタネイトか否か
- ラウンド・フラットワウンド
- 弦の高さ
- 弦の太さ
- 弦の古さ
- ピックアップ種類
- (各)ピックアップ音量
- ピックアップ位置
- プリアンプのパラメータ
ヤバないですか?
MODO BASSは調整できる箇所が多いだけでなく、その変化の仕方も「それっぽい」です。
ベースについて多少知識がある人なら、「もうちょっとブリッジ寄りの音が欲しいんだけど・・・」と思うこともあるはずです。
そんなとき、普通は「EQ+コンプでがんばる」しかないんですが、MODO BASSなら「本当にブリッジ寄りで弾ける」わけです。
打ち込みやすい
例えば、ベースの打ち込みだと「スライド」をしたいことが多いと思います。
でもMODO BASSは「リアルタイムに音を合成」しているので、どの音からどの音にスライドしようが問題ありません。
スライドの打ち込みには「1.ピッチベンド 2.CC」の2つの方法があり、「ちょっとアクセントをつけるだけならピッチベンド」「派手めなグリッサンドにはCC」という便利な使い分けも可能です。
この辺はサンプリング音源の宿命ですね
指弾き・スラップ:
「指弾き・スラップ」「ゴーストノート」「スライド」「複音(しかもスライド)」
これだけ色んな奏法を駆使しても、破綻してないし、違和感もないですよね?
「打ち込みやすい」もそうなんですが、「いろんなテクニックを駆使しても破綻しない」というのもMODO BASSのありがたいところです。
ストレージを圧迫しない
これはシンプルですが重要ですね。
Trilian:34GB
MODO BASS: 200MB
そういうことです。
短所
わかりやすく良い音ではない
MODO BASSは「とりあえず鳴らしておけばそれっぽくなる」音源ではないかもしれません。
モデリング音源なので、ベタ打ちでもそれほど単調にはなりません。
でも、逆に言うと1音1音の迫力・説得力はそれほど無いです。
音質的にもわりとナチュラルで、ミックスに馴染みづらいということはないはずです。
でも、逆に言うと「とりあえずMODO BASSに支えてもらえばいい」というのは無茶です。
「指示したことは正確にこなしてくれる。でもそれ以外のことは勝手にやらない」
というのがMODO BASSのキャラクターだと思います。
「短所」に含めるべきじゃないかもしれませんが、個人的にはもう少し存在感のあるベースサウンドを期待していました。
運指がスマートじゃない
運指のアルゴリズムが微妙です。
アルゴリズムというのは、「たったいま『ド』を4弦8フレットで弾いた。次の『ミ』はどのポジションはどこで弾こう?」ということですね。
微妙というのは、「『ミ』をどこで弾こう?」に対して「よし、2弦2フレットで弾こう!」などどいうトンチンカンな回答を出してしまうということです。
さすがに上の例は極端かもしれませんが、曲を再生しながらMODO BASS上の指板を見ていると、「?」という運指をするのも事実です。
MODO BASS–デモ・機能紹介
奏法
奏法切り替え
指弾き・スラップ:
指・ピック・スラップの3種類をキースイッチ or 画面上のボタンで切り替えられます。
ピアノロールの「E1」より上は、ベースの実際のフレーズです。
このデモでは1小節ごとに「指弾き → スラップ」で弾いています。
なの1小節ごとにキースイッチで切り替えています。
「スラップ」に切り替えるキーが「A#0」
ピッキング位置
「どこでピッキングするか」も調整できます。
ネック側:
ブリッジ側:
これ、めっちゃそれっぽいですね。
確かに本物のベースのポジションごとの音色に近いです。
ピッキング強さ
ピッキング・タッチの強さも変えられます。
強く:
弱く:
オルタネイト・ダウンピッキング
いちおう指弾きでも指定できるんですが、「人差し指だけで弾いてほしい!」と思うことはあまりないはずなので、ここではピックのオルタネイト・ダウンピッキングの比較だけします。
ピック・オルタネイト:
ピック・ダウンのみ:
「本物のオルタネイト・ダウンの差に近いか?」と言われると微妙ですね・・・。
「ダウンだけの方が粒がそろう」というのは生演奏の話で、MODO BASSに関しては、オルタネイトの方が適度にバラけて生っぽくなる気がします。
ダウンのみのピッキングはバラツキが少なくて打ち込み臭い気がします。
スライド
スライドの打ち込み方は2通りあります。
- ピッチベンドホイール
- コントロールチェンジ(デフォルトは64番)をONにしながら、2つのMIDIノートを重ねて配置
ピッチベンドホイールはそのまんまですね(レンジは設定できます)。
CCを使うやり方も、Scarbeeのベースシリーズと同じなので、わかる人も多いと思います。
ハンマリング・プリング
最初はちょっと馴染めなかったんですが、MODO BASSでは、ハンマリング・プリングもキースイッチを使用する必要があります。
単純にレガート(ノートを重ねて配置)では普通のプレイになってしまうようです。
デフォルトではC0です。
ゴーストノート
音源によっては、弱いベロシティがゴーストノートに割り当てられているものもあります。
MODO BASSではやはりキースイッチで、デフォルトではA#-1です。
ハンマリング・プリングとゴーストノートはちょっと面倒くさいかな・・・。
運指の指定
MODO BASSの運指はそこまでスマートじゃないです。
自動運指は「First Position」「Easy」「Nearest」という3つのアルゴリズムから選べますが、場合によっては自分で指定したほうが良いです。
例えば、同じ弦同士じゃないとスライドできません(同音異弦の修正はしてくれない)。
方法は2つあります。
- キースイッチで弦を指定する
- CCでポジションを指定する
指弾き・スラップ:
デモのフレーズの最後では、「レ」から「ブゥン↓」と下がっています。
でも、キースイッチで指定しないと3弦で「レ」を弾いてしまっていました。
その状態だとスライドできないので、「レ」を4弦で弾くように指定しています。
弦
弦についてもかなり細かく調整できます。
まあ、そんなにコメントすることがないので、音源だけ載せておきます。
ラウンド・フラット
ラウンドワウンド:
フラットワウンド:
現代のポップスではラウンドワウンド弦が主流ですが、古いソウル系のサウンドにはフラットワウンドが欠かせません。
フラットワウンドのスラップも渋いですね・・・。
弦の高さ
高い:
低い:
弦の太さ
太い:
細い:
弦の古さ
新しい:
古い:
電装系
ピックアップ種類
ベースのモデルとは全く独立して、好きなピックアップを載せることができます。
ジャズベにサンダーバードのPUを載せたりもできるわけです。
ピックアップ位置
ピッキング位置と同じように、ピックアップの位置も自由に変えられます。
試しにジャズベのPUを限界までブリッジ寄りにしてみました。
あんまり使える音じゃないですが、「たしかにピックアップをブリッジ側に寄せた音だな」と感じるんじゃないでしょうか?
まとめ
冷静に紹介しましたが、ふつうに最高ですよ。
複雑なフレーズを上手く弾きこなしてくれるし、妙なクセがないのがいいですね。
ベースの打ち込みが好きという人に特にオススメですが、そこまでパワフルさが求められないジャンルだったら、とりあえず無難に弾いてくれるはずです。
IKはセールが多いので、ぜひ安くなっているうちに買いましょう。
私はセール+クロスグレードで1まんえんくらいで買えました・・・